瓦屋根の土葺き工法(湿式工法)は、瓦の下に大量の土を敷いて瓦を重ねていく方法です。土葺きのメリットは、大量の土の重さで強風に飛ばされない点と、断熱性が保たれる点です。瓦屋根は耐久性が高く、100年を超える年月に耐えることもあるほどで、大地震等の被害を受けない限り長い期間住宅を守り続けます。
しかし、メリットばかりではありません。土葺きのデメリットとしては、 大量の土と瓦で屋根の総重量が重くなり、建物全体に負荷を掛ける点です。それだけでなく、経年劣化により土が瘦せ、その下の野地板にまで影響が及ぶと、雨漏りの原因に繋がります。一見、瓦に破損箇所が見当たらなくても、瓦を外して点検してみると、下地の土と野地板の劣化が進んでいることが多くあります。
地震の揺れによって住宅が受ける影響の大きさは、屋根の重さと相関関係にあります。次の図のように、屋根が重いと揺れが大きくなり、建物全体に負荷を掛け倒壊しやすくなります。当然ですが、屋根が軽量になれば揺れは小さく、建物への負担も軽減できるのです。したがって、耐震面を考慮すると、屋根材を軽量にすることはとても重要なこととなります。
下の表は、瓦屋根の土葺きを葺き替えた時の重量を比較したものです。一般的な30坪の住宅の場合、土葺きでは約9,000㎏ですが、引掛け桟工法にするだけで約6,000㎏と3,000㎏も軽量化することができます。さらに、瓦屋根ではなく、別素材のスレート材にすると約2,000㎏、金属製の屋根材であれば600㎏と、その差は歴然です。
瓦屋根の土葺きを葺き替える方法をご紹介する前に、まずは、土葺きとはどのようなものなのかをご説明しましょう。土葺き工法は、瓦の下に大量の土を敷いて瓦を重ねていく方法です。粘土の接着力により瓦を固定させるもので、別名、湿式工法と呼ばれます
工程としては、まず土を敷く前に下地となる野地板を貼ります。土葺き瓦屋根が主流であった年代は、主に乾燥しやすい杉材のバラ板が野地板に使われていました。近年使用されている野地板は、さまざまな木材が使われた合板となっています。次に、全面に粘土を敷き詰めていきます。 屋根全面の土と瓦の重さで住宅が安定し、断熱効果と雨盛りへの耐性がある点がメリットと考えられ長年使用されてきました。しかし、耐震面に弱い点が大きな問題となり、この土葺き工法は使用されなくなっていきます。
冒頭でも触れましたが、瓦屋根の土葺きは1923年の関東大震災で多くが倒壊したことをきっかけに、関東では使用されなくなりました。また、関東大震災から70年の時を経て、1995年の阪神淡路大震災を機に、関西地区での土葺きも行われなくなっています。これらの大きな地震の際に、土葺きの瓦屋根は崩れ落ち、屋根の重さに耐えられなくなった建物は倒壊しました。
この阪神淡路大震災の際に、土葺きの瓦屋根の住宅が多く倒壊したことがきっかけとなり、屋根の軽量化と建物自体の耐震補強を推進する動きが加速化します。2000年に建築基準法を改正し、2001年に「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が制定されました。これにより、瓦屋根の施行方法として主流であった土葺きはなくなりました。
土葺きに代わる瓦葺き方法として、引掛桟瓦葺き工法が生まれ、さらに引掛桟瓦葺き工法へ新たな基準を設けた「ガイドライン工法」による施工へと移行していきます。2000年以前の引掛桟瓦葺き工法では、瓦4枚につき釘を1本打つ方法で瓦を桟木に固定していました。しかし、このガイドライン制定以降、瓦2枚ににつき釘1本を使うことが最低基準となり、瓦1枚に1本の釘を使う「全数緊結」が推奨されています。 また棟瓦には、漆喰ではなく乾式面戸シートを下地に敷いて施工する乾式工法を採用し、軽量化と高い耐久性を実現することや、防災瓦を使用することも推奨しています。この改正により、地震や台風などの自然災害に強い瓦屋根が実現できます。
また強風対策として、さらなる建築基準法の改正が行われました。2022年1月1日からは、瓦屋根の緊結方法がさらに強化され、強風対策が義務化されています。各地域により基準となる風速や地表面区分などが異なるため、ガイドラインに沿った施工方法が採用されます。
ここからは、土葺きの瓦屋根の葺き替え方法として、同じ瓦を使用した引掛け桟瓦葺き工法をご紹介します。瓦屋根には瓦屋根にしかない魅力がありますので、葺き替え工事をする際にまた瓦屋根をご選択される方もいらっしゃいます。
かつて主流であった瓦屋根の土葺き工法は、まず垂木を打った上に杉皮などの下葺き材を敷き、その上に大量の粘土を敷き詰めて瓦を固定していくものです。この瓦を接着するための土が大量に使われるために屋根の重量が増していたのです。
一方、新しく瓦葺きするための方法として現在主流となっているのは、引掛け桟瓦葺き工法です。垂木を打った上に野地板を敷き、その上に防水シートを貼っていきます。さらにその上に桟木を打ち付け、桟木に瓦を引っ掛けて固定する施工方法です。土を使わずに、瓦を桟木に引っ掛けて固定をするため、軽量化が実現できます。
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従来は桟木に引っ掛けるだけの施工方法でしたが、建築基準法の改正が行われ、2022年からは、台風や地震などの自然災害対策として、釘を打って固定することが義務付けられています。これにより、強風にあおられて瓦が浮き上がったり、地震などでズレたり落下したりすることが防止できます。
また、以前は棟部分に粘土と漆喰を使った湿式工法で棟瓦を積み上げていましたが、現在では、乾式面戸シートを使った乾式工法を採用するようになったため、ここでも軽量化が図れます。
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